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斎藤真司(教授)(3ページ) 分子研リポート2014 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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128 研究領域の現状

6-2 理論・計算分子科学研究領域

理論分子科学第一研究部門

斉 藤 真 司(教授) (2005 年 10 月 1 日着任)

A -1) 専門領域:物理化学,理論化学

A -2) 研究課題:

a) 生体分子における階層的構造変化動力学の理論研究 b) 生体分子における励起エネルギー移動の理論研究 c) 過冷却液体のダイナミクスの理論研究

A -3) 研究活動の概略と主な成果

a) A N T ON による分子シミュレーションのデータから,運動の時間スケールの違いにより決定した構造変化(f ol di ng / unfolding)の反応座標により自由エネルギー面を描き,タンパク質の折れたたみに関するダイナミクスの解析を行った。 その結果,不均一で多様なダイナミクスを示していることを明らかにした。また,蛍光スペクトルや F R E T にも関わ る構造変化に関する多次元解析として,残基間の距離の揺らぎの多時間相関関数およびその寿命の多次元スペクトル の解析を提案した。その結果,異なる時間スケールを持つ構造揺らぎのカップリングの時間変化,すなわち,どのよ うに構造変化ダイナミクスが動的に絡み合っているか等を明らかにした。

b) 光合成系では,発色団で吸収された光エネルギーが励起エネルギー移動により効率よく活性中心へと伝達される。し かし,高効率エネルギー移動がどのように達成されているのか,すなわち,各色素のエネルギーレベルがどのように 決まり,それらが振動・構造揺らぎの影響をどの程度受けているのか明らかにされていない。そこで,我々は,異な る環境に置かれた色素の励起エネルギーの揺らぎの解析手法の開発を進めており,F enna-Matthews-Olson(F MO)タ ンパク中の色素の励起エネルギーの揺らぎが周囲の環境に大きく依存していることを明らかにした。

c) 水は他の液体には見られない多くの熱力学的異常性を示すとともに,温度低下とともに異常性が増すことも知られて いる。我々は,温度低下に伴う等圧比熱の特異的温度依存性や,T I P4P /2005 ポテンシャルを用いた場合,温度を下 げ約 220 Kで fragile-strong 転移を示すことを明らかにしてきた。さらに低い温度の水の状態を解析し,L D L と HD L の転移が遅くなり動的不均一性が抑制されることを明らかにした。

B -1) 学術論文

M. HIGASHI, T. KOSUGI, S. HAYASHI and S. SAITO, “Theoretical Study on Excited States of Bacteriochlorophyll a in Solutions with Density Functional Assessment,” J. Phys. Chem. B 118, 10906–10918 (2014).

(2)

研究領域の現状 129 B -4) 招待講演

S. SAITO, “Spatio-temporal heterogeneous dynamics in condensed phases,” Cooperation of Computational Materials Science

and Mathematics, Toward Smart Materials Design II, Sendai, January 2014.

S. SAITO, “Dynamics of supercooled water,” Dynamics of Complex Chemical and Biological Systems, IIT Kanpur, Kanpur

(India), February 2014.

S. SAITO, “Fluctuations and relaxation in water,” 7th International Conference on Coherent Multidimensional Spectroscopy, University of Oregon, Eugene (U.S.A.), July 2014.

S. SAITO, 「凝縮系における時空間不均一動力学」, 分子科学討論会 , 東広島 , September 2014.

S. SAITO, “Dynamics of Water and Biomolecules,” Japan-Indo Bilateral Collaborative Seminar, Nara, November 2014.

B -6) 受賞,表彰

金 鋼 , 日本物理学会若手奨励賞 (2010).

B -7) 学会および社会的活動 学協会役員等

理論化学討論会世話人会委員 (2002–2009). 日本化学会東海支部幹事 (2007–2008).

分子シミュレーション研究会幹事 (2007–2011, 2015– ). 分子科学会運営委員 (2008–2012).

日中韓理論化学ワークショップ (2013– ).

B -8) 大学での講義,客員

総合研究大学院大学物理科学研究科 , 「生体分子シミュレーション入門」, 2014年 12月 11–12日. 神戸大学大学院理学研究科 , 2014年 12月 18–19日.

B -10) 競争的資金

科研費基盤研究 ( B ) (2) , 「生体分子の構造遍歴ダイナミクスと機能発現の分子機構の理論的解明」, 斉藤真司 (2013年度 –2016年度 ).

科研費挑戦的萌芽研究 , 「生体分子の構造変化に伴う状態遷移ダイナミックスの解析手法の開発とその応用」, 斉藤真司 (2011年度 ).

日印共同研究 , 「水および水溶液の構造とダイナミクス:理論と実験」, 斉藤真司 (2010 年度 –2011年度 ).

科研費基盤研究 ( B ) (2) , 「線形・非線形分光シミュレーションによる緩和および反応ダイナミクスの解明」, 斉藤真司 (2010 年度 –2012 年度 ).

科研費特定領域研究(計画研究)「空間・時間不均一ダイ, ナミックス理論の構築」, 斉藤真司 (2006年度 –2009年度 ).

科研費基盤研究 ( B ) (2) , 「化学反応および相転移ダイナミクスの多次元振動分光法による理論解析」, 斉藤真司 (2004年度 –2006年度 ).

(3)

130 研究領域の現状 C ) 研究活動の課題と展望

近年の計算機の発達により,比較的小さなタンパク質に関してはマイクロ秒オーダーの計算が可能となった。さらに,特殊な ハードウェアを用いて求められたミリ秒のトラジェクトリ計算を利用できるタンパク質もある。しかし,このように長時間のトラ ジェクトリが得られるようになった現在も,依然として構造解析や自由エネルギーに関する解析が殆どであり動的の理解につ いては十分に進んでいない。大量のデータから動的情報を抽出する解析手法が求められている。我々は,様々な観点からタ ンパク質の構造変化動力学・機能発現機構の解析を進めている。

その一つとして,幅広い時間スケールの運動をもつタンパク質において,速い運動と遅い運動がどのようにカップルしている のかを解析している。約20年前に分子シミュレーションに基づく多次元分光法の解析手法を我々は世界に先駆けて開発し, 水の分子内・分子間運動の揺らぎ・緩和の分子機構を明らかにしてきた。その後,多時間相関関数の特徴を活かした解析 を過冷却液体の遅い運動,とくに動的不均一性の寿命の解析に展開してきた。今後,本解析を様々なタンパク質の構造変化, 機能発現の創発機構の解明を進める。

機能発現の解明に関する二つ目の解析として,光合成系とくに F enna-Matthews-Olson(F MO)タンパク質における高効率な 励起エネルギー移動の起源の解明を進めている。F MO にはBChl a が 7分子が配置されており,励起エネルギー移動ダイナ

ミクスにおけるタンパク質の構造や揺らぎの役割について電子状態計算を行い,ポテンシャルエネルギー面や相互作用の解 析をさらに進めている。

機能発現の解明に関する三つ目の解析として,時計タンパク質 K aiC におけるA T P 加水分解反応の解析を進めている。他の A T Paseとは異なり,K aiC の加水分解速度は非常に遅いことが実験により明らかにされている。秋山グループによるK aiC の A T P/A D P 状態の詳細な構造が詳細に解析されている。分子シミュレーションと電子状態計算により,K aiC における構造揺 らぎ・変化が A T P 加水分解とどのように共役しているのか解析を進めている。

過冷却水のダイナミクスに関して,非常に低い温度の運動の解析を進めており,動的に不均一な状態から静的に不均一な状 態へとどのように変化していくかについて解析を行っている。

参照

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